大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和30年(う)300号・昭30年(う)299号 判決

職権をもつて、原判決の法令の適用を調査するに、判示第一の(1)乃至(3)及び第二の各事実について、覚せい剤取締法第十七条第三項第十四条(同条第一項の趣旨と認む)第四十一条第四号第二号(同条第一項第四号第二号の趣旨と認む)等を適用している。ところで、覚せい剤取締法は、昭和二十九年六月十二日法律第百七十七号によつて一部改正され、即日施行されたのであるが、同法律附則第二項により、その施行以前の行為に対する罰則の適用については、なお改正前の旧法によるべきものと定められているので、判示第一の(1)の事実は、昭和二十八年十一月上旬頃より昭和二十九年五月中旬頃までの所犯であり、又、同一の(3)の事実は、昭和二十八年六月下旬頃より同年八月下旬頃までの所犯であるから、これらの各事実については、右改正前の旧法によるべきものであることが明らかであり、判示第一の(2)及び第二の各事実についてのみ、右改正後の新法を適用すべきものである。然るに、原判決が右のように区別せずして、単に前記のように判示してあるのは、法令の適用を誤つているといわなければならない。しかし、右改正の前後を通じて法条は同一であり、たゞ同法第四十一条第一項の罰条の法定刑が、旧法においては、三年以下の懲役又は五万円以下の罰金であつたのが、新法においては、五年以下の懲役又は十万円以下の罰金と改正されて、重くなつているが、併合罪の加重をなすについて、法令の適用に誤のない判示第二の罪について選択した懲役刑に法定の加重をなしていて、その処断刑の範囲において差異がないので、右法令適用の誤は、判決に影響を及ぼさないということができる。次に、原判決が押収にかかる証第一号の覚せい剤を没収するについて適用する旨を掲記している覚せい剤取締法第四十一条の二とあるのは、同条の三の誤記であると認められ、又、刑事訴訟法第百八十一条を掲記してあるが、原判決においては、訴訟費用を負担させる旨の言渡をしていないのであるから、同条を掲記するの必要なく、或は、訴訟費用の負担をさせない趣旨において、同条第一項但し書の意味として掲記したものか否かを調査して見るに、原審においては、被告人が私選弁護人を選任する以前に、国選弁護人を選任しているのであるが、これに対して報酬等を支給していないことが記録上明らかであるから、その趣旨においても、同条を掲記するの必要がないものであつて、誤記と認むるを相当とする。従つて、以上の瑕疵は、いずれも、原判決を破棄するに足りない。

(裁判長判事 高橋嘉平 判事 山口正章 判事 海部安昌)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!